ルドルフとイッパイアッテナ (2016)

2020年8月13日木曜日

2016年の作品 ジャンル:ドラマ 製作国:日本 動物:犬 動物:猫

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~4989 5963~


〇はじめに

 おもしろかった、本当に楽しかった。教養を身に付ければ世界が違って見えてくる、アプローチができるというところを猫という視点でうまく魅せたと思う。しかしだからこそ気になるところが目についてしまった...



〇想起する作品

 「リトル・チャロ」
 「なまえのないねこ」
 「耳をすませば」(1995)
 「借りぐらしのアリエッティ」(2010)


〇こんな話

 ルドルフ、家に帰る。



〇人間世界

 初っ端に目についたのが飼い主が敷居を踏む画である。


 当初は子どもだからと踏ませた理由があるのだろうと思っていたがこれのフォローは一切無かった。あの場面で母親が指摘しても良かったのではないか。

 職員室においては敷居を跨いでいる教師も、イッパイアッテナが病院に運ばれるシーンでは病院の敷居を踏んでいる。運ばれるときならばまだいい、そんなことを気にしている場合ではないからだ。しかし治療を終えて出てくる場面でもこれまた踏んでいる。これはどうなのだろうか。


 飼い猫/野良猫といった世界の違いを見せる上でもこういった境界線は重んじないといけなかったのではないか。そもそもこれを誰も指摘できないのか。製作段階で、編集段階で、試写の段階で。子ども向けだから、ではない。子ども向けだからこそこういった細かいところは気にしていかないとダメなんだよ。丁寧に作っていかないとダメなんだよ。

 黒猫を不吉だと思うのは教養が無いからだとイッパイアッテナがルドルフを励ますが、イッパイアッテナがマナー講釈してくれても良かったんだけどな・・・


 例えば今まで当たり前のように与えられていたエサ。野良猫は自らの食べ物を自らで調達しなければならない。ここで人間との付き合いを描いていく工程はこの上なくすんばらしいのだが、ここに「いただきます」や「ごちそうさま」といった挨拶を持ち込んではどうだろうか?

 食事の前に(後に)そういった挨拶をするのだと。自らの努力で手に入れた飯である。威厳のあるイッパイアッテナが猫を被ってでも手に入れた飯である。目の前にある食の貴重さ、食への感謝というのが際立ってこないだろうか(最後の晩餐のステーキでは「いただきます」と言ってるんだよね)。

 また残さず食べなさいといった注意や、残さず食べてえらいねといった感謝を見せてくれたって良い。イッパイアッテナが魚の切り身を最後ペロリと平らげる画は描かれていたので、そこにもう一押し...


 好き嫌いに関してはどうだろうか。人間にも都合があり今日はこれしかないという、あまり好みではないものがご飯として出てくる場合もあるはずだ。生きるためには(強くなるためには)、それこそ教養を身に付けるためには、と好き嫌いをするなと観せてもよかったのではないか。イッパイアッテナがルドルフに俺みたいになれないぞと言ってくれたって...


 ドアや窓を開けるシーン。前足で開け、顔を突っ込むことで開け、さらに入って行く過程で体でまた開ける。猫の行動がすんげえ細部まで再現されており愛着が湧くんだけど、ここもね...

 ドアは開けたら閉めるものとして描いてはどうか。最初の校舎侵入においては窓を開け放ったまま出ていくルドルフたちが描かれたが、これを彼ら猫ではなく誰かしらに閉めさせる画を入れてみては。子どもや教師が率先して閉めたっていい。

 季節的なこと、登校時間だったことを考慮すべきか・・・


 もう少し...

 給食の献立の件。シチューの日にいつも来るというのは献立(文字)が読めるからだけでは足りないはず。日にちや曜日の概念である。事前にイッパイアッテナが何かを気にする素振りを観せる必要があっただろう。どこかで曜日ごとのイベントを描いたってよかった。後々のバスツアーにも活かせたことだろう。

 そして時間である。時計を読めるってな件も挿んでもおもしろかったと思う。桜や雪で季節の概念があり、満月も観せられるのであればそこのところ気にすることもできたはず。意図して排除した可能性も否めないけど。


 猫視点だからこそアプローチできる、いや再確認できる人間の常識やマナー、礼儀というものがもっと組み込めたはず。猫の描写は滅茶苦茶細かく再現されておりそれだけで心地良い作品なのだが、だからこそ子どもと一緒に観た大人が今一度自らを見つめ直す作品でもあってほしいとより多くを望んでしまう。


 いやなに素晴らしい作品だったことには違いないのだけれど。


〇最後に

 猫の描写は申し分無く、そこまでの観察眼がありながら人間世界における描写に少し配慮が行き届いていないと見えてしまうのが少々残念だった。気にするところではないのかもしれないけれどね...

 ではでは・・・


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