~起点~


〇はじめに 

 まぁ確かにこのただ落としたかっただけ感は怪しかったね・・・



〇想起する作品

 「ユージュアルサスペクツ」(1995)
 「unknown アンノウン」(2006)
 「ピエロはお前を嘲笑う」(2014)


〇こんな話

 う~ううっうっう~♪



〇騙される心理

 ロフトに順々にシェア者たちが合流していくわけであるが、この順々に現場に辿りつく様で状況を把握させて行ったのはうまかった。我々に作品へのアプローチ方法を無意識に沁み込ませる。

 そして警察の取り調べ、5人のやり取り、過去回想と3視点で進行させていくことで、提示されていく情報を従順に積み重ねていくしかならない状況を作り出している。

 最初に飛び降りを描いたのもこれとの兼ね合いだろうか。我々は重力に逆らえないわけだが、それよりも上から下へと、生から死へと時間とともに向かっていくことへの意識。時間は一方通行であると。

 ルークが抱えていたワインボトルを落とすことで念を押す。


 形あるものはいずれ壊れる。さらに踏ませることでもう一押し。


 ここでポイントはどこから我々は情報を積み重ねていくことになるのかということ。これを設定しなければ推理という作業は進まない。我々は作品にアプローチする上で勝手に前提を作り出さなければならないのである。

 ではその前提は正しいのか? どのように築いたものなのか?


例えば・・・

 飛び降りに関してアプローチする場合・・・

  どこから飛び降りたのか? 飛び降りた場所を映し出していた。

  誰が飛び降りたのか? 暗くて見えない。

  ではなぜ飛び降りたのか? それをこれからやるんでしょうが!!

 ここでは誰かが飛び降りたということしかわからないが、飛び降りたという結果からどこまでを連想できただろうか?   


 ルークワインボトル落下事件の場合・・・

  ワインボトルはなぜ踏まれたのか? 落ちていたからである。

  ワインボトルはなぜ割れていたのか? 落ちたからである。

  ではなぜ落ちたのか? 落としからである。

  ではどこから落ちたのか? 彼の手から落ちたのである。

  ではなぜ落としたのか? ベッドで女が死んでいたからである。

  ではなぜ女は死んでいたのか? だからそれをこれからやるんでしょうが!!

 ここではどうだっただろうか?


 ・女がベッドで死んでるけど何で?

というざっくりとした状況理解から、我々が作り出した前提は、

 ・女性が手錠をはめられ手首を切りベッドにメッセージを残し死んでいたこと

 ・ルークがロフトに最初に到着したこと

だったはずだ。ここから何が起こったのかを推理し始める。この前提をどこから疑い始めただろうか?

 それに対するヒントや示唆は為されていた。

 ルークの荷物に関しては、彼のロフトまでの道のりは描いていたし、本来であれば、どこで買ったのか?、何故買ったのか?というところまで想起できるわけであるが、状況が状況だけに優先順位をつけてしまいその疑問は払拭される。

 ビンセントがワインボトルを踏むという行為。ビンセントはこのときになぜワインボトルが落ちているのか(割れているのか)?という疑問と、誰が落としたのか?という疑問が浮かんだのだろうがそれよりもなぜベッドで女性が死んでいるのか?という疑問が優先されてしまうわけである。

 物事には必ず起点があるわけだが、どこまでを見つめるべきなのか。これがこの作品のうまいところで、推理というアプローチをさせる上で、我々に無意識にその方法とそれを行う上での前提を定めさせているのである。ルークのロフトへの到着から事は始まったのだと。犯人はそれまでにロフトから出た人間であると。

 ビンセントがワインボトルを踏んだのも、彼の起点はワインボトルが落ちている状態からであると意識させるためだ。ルークの後に彼が来たという前提を構築させる。次に到着する人物の起点はノックである。これに従い我々は勝手に付加されていく情報を従順に積み重ねていくべきだという思考に陥ってしまう。

 その前提とするところを疑い始めると、ルークが到着する前に部屋にいた人間を絞り込んでいくことになるわけだが、ここがものすごく曖昧なことに気付く。

ベッドで死んでいる女性との関係・・・

 ・彼女をロフトに連れてきた人物と殺害した人物は同一人物であるか否か

 ・ルークが到着するまでに部屋から出た人物と殺害した人物は同一人物であるか否か

 ・彼女をロフトに連れてきた人物とルークが到着するまでに部屋から出た人物とは同一人物であるか否か

 この観せ方がビンセントの物事へのアプローチ方法に集約されている。都合の悪いことをひたすらに排除し、都合の良いことをひたすらに繋ぎ合わせ自らの罪は棚に上げ責任を擦り付ける。最終的に辿りついた答えも妻たちにはめられたという自らは飽くまでも被害者であるというものだった。彼は自らが悪くないという前提を作り出していたのだ。

 そこを認めさせることが起点を疑わせる、改めさせるということで、その後のもう一件に活きてくる。

 ビンセントの起点、他4人の起点、さらに他4人の中の1人であるルークの起点が異なるということだったわけだが、  

 ここでさらにうまかったのが、我々がなぜ女性が死んでいるのかという起点を探っている中で、提示されている情報の中で、過去ではなくこれからの未来のもう一件の起点が作られていたところである。ルークが予期していなかった事態の構築。

 ルークの到着から始まったとされる事件が、4人の策略だったと、いやその前に実はルークが・・・、真相究明へ過去へアプローチさせていた中で、未来におこる起点を作っていた。

 これもうわかんねぇな・・・


 ルークを見つめてみると、階段を上りロフトへと向かう画で始まり、テラスからの飛び降り(落下)で幕を閉じる。一段一段上ったものも、たった一歩踏み外すだけで真っ逆さま。彼らはいったいどこで踏み外したのだろうか。人生の転落というところも狙っているのか。

 ワインというものが何年も寝かせて熟成させたもので、そんなものが落ちて割れこぼれるという見方もできるか。これがルークと掛かっていたと。


〇余談

 この右の人は誰なのだろうか・・・




 気になります。


〇最後に

 久しぶりに勝手にうまいと唸ってしまうサスペンス映画を観た。おもろかったな~。

 ではでは・・・



P.S.
 オリジナルの「ロフト」を続けて鑑賞したがそのまんまだった。このリメイクは俳優を変えて見映えを良くしての焼き増し・・・ どちらかで十分ではないだろうか。

 あ~そうそう、フィリップ役は同じ人が演じたんですね。


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