~表現~
〇はじめに
独特なんだよな…お貌が…他人との距離感を測りかねており、自分の感情を表現することが苦手な主人公。それ故に技術はあるもののキャンバスの上にそれを乗せることもまた不得手。そんな彼女がとある事件の被害者となってから豹変する。
振り絞った被害者の声を届けようとしない、聞き入れようとすらしない学校の対応。声を上げた被害者が非難され、加害者は平然と日常生活を送っている理不尽。主人公は加害者が悪いのになぜ被害者である私たちが変わらなければならないのか、自己防衛という手段に甘んじるよりも男たちを変えるべきだと憤る。
目には目を歯には歯を。復讐の手段として女であることを利用している様は被害に合った状況に酷似しており、彼女もまたレイプ加害者同様合意なく事に及んでいる。やっていることはレイプ犯と同様であるが、段々と色味を帯びていく彼女に魅せられていくと彼女のとった方法は決して間違いではない、いやむしろ正しいのではないかとすら思えてくる。
それにも関わらず異なってくる事後対応。レイプ事件では被害者の声は封じられ、加害者が表舞台を闊歩することを誰も咎めなかったのに対し、殺人事件では死者の声に必死に耳を傾け、セカンドレイプしてまで加害者の特定に躍起になる。レイプ事件ではやっとこさこぎつけた新聞記事掲載が、殺人事件では翌日に一面を飾る。片や被害者を非難罵倒し、片や被害者(レイプ犯)を聖人扱い。
心の殺人と肉体的な殺人とでいったい何が違うというのか?
彼女はある側面において方法を間違ってしまったかもしれないが、正直であったことには違いない・・・
声を上げようと上げまいとどちらにしろ苦しむことになる被害者たちの姿に、そしてそれを取り巻く周りの者たちにいったい何を見るのだろうか・・・
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