ジグソウ:ソウ・レガシー (2017)

2020年3月31日火曜日

2017年の作品 ジャンル:サスペンス シリーズ:ソウ 製作国:アメリカ 舞台:脱出ゲーム

t f B! P L


~後継者問題~


〇はじめに

 そうだ…石田太郎は亡くなったんだったね。野沢那智の時もそうだったけど、あの声が聞けなくなったんだとする自覚の芽生えがこういったところで再び現れるのはまた寂しいものがあるね。


〇想起する作品

 「パニッシャー」(2004)
 「崖っぷちの男」(2012)
 「デクスター」


〇こんな話

 うぇ~い、久しぶり~



〇後継者問題

 グダったシリーズの全てを踏襲しコンパクトに1作にまとめた手腕は見事だが、仕切り直しによるシリーズの否定の反面、これはシリーズ化があったからこそ描けた世界である。そしてこのリブートもまた後のシリーズ化を狙う意志が見え隠れする故、素直に肯定的な評価をさせてくれない・・・


 旧シリーズにおいて回を重ねる毎に見えてきたのは、数々のゲーム同時進行における末期癌患者ジグソウのアクティブさと、いや実は独りじゃゲームを成立させるのは相当に厳しいねんということでの急を要する後継者問題を兼ねた一癖も二癖もある協力者の存在。ジョンがたった独りマイウェイを突っ走っていたのではなく、後継者の座を争う協力者たちと共にやっとこさゲームの開催に漕ぎつけていたのだ。

 まぁそんなこんなで段々とジョンの格が下がっていったのは言うまでもなく・・・

 そんなイメージありきで観るべきなのか?

 いや今までのイメージは払拭してくれとしているのか?


 今作で展開されたゲームにおける自動化されていない仕掛けが気になる。罠が解除される段階が明らかにアナログなものであったわけだが、これは誰かがそのゲームを観ているとする「SAW」の原点回帰を想わせながらも、監視者というより裁定者という様相を呈している。ゲームが始まる前に明確な基準が用意及び固定化されていないということになるからである。

   今まではゲームに参加させられたプレイヤー自身の選択が自身の生と死を分けるのだと強調してきたが、今作はプレイヤー依存ではなく、ゲームの監視者兼裁定者の裁量によってプレイヤーの生き死にが判断されているととれてしまう。  

 こういったところを鑑みるラスト・・・

 結局のところ復讐に過ぎなかったことになるわけで・・・  

 となると、ハロラン刑事には果たして生き残る道は残されていたのだろうか?…という疑問が沸き起こることになる。リモコン操作によって裁きを下したことがその疑問に拍車をかける。

 仮にハロラン刑事が自らに向けられたスイッチを押し、罪を告白していたのなら生存ルートは開かれたと言えるだろうか?


 時系列を前後させたことで腑に落ちなくなるのだが、ジョン・クレイマーの仕掛けたゲームにはどこか違和感を覚えつつも最後の最後でやっとプレイヤー自身に委ねられる生と死の分岐が確かに見て取れた。

 対し後継者の仕掛けたゲームの体たらく。これは初代ジグソウと後継者との間の溝を描こうとする意図があったのか、それとも正当な後継者の確立なのか・・・


 初代ジグソウであるジョン・クレイマーのルーツもまた復讐であったことは前シリーズにて明かされた。今作にも新しく甥が殺されたとする話が盛り込まれている。しかしそこには救済と更生というジグソウの身勝手だが確かな意義があったはずなのだ。それに対し、ただただ自らの怒りの捌け口にと復讐を完遂するだけのゲームを仕掛けた男がいた。ホフマンである。では彼はどうなったか・・・

 初代ジグソウとどこか共通するルーツを持ち、後継者として失格の烙印を押されたホフマンにもどこか共通する今作の新たな後継者・・・

 こういった謎を落とす意図があったのかどうなのか・・・    

 締めの台詞が“ゲームオーバー”ではなく“死者の代弁者”だとして、被害者に代わって裁きを下すとする宣言がジグソウによっても為されていたがこれも気になるところ・・・


 はてさてどこへ向かうのか・・・


〇最後に 

 「ソウ2」~「ソウ4」を監督したダーレン・リン・バウズマンは後々の作品もそうなんだけど、教祖と信者との間で存在するギャップや、どこか盲目的な信仰心を皮肉るのが嫌味たらしくてそこが味だったんだよね。それが後継者問題に活かされてて。

 まぁそれ以降また監督が代わって代わって段々とピタゴラスイッチ思考が強くなっちゃったんだけど、その自動化された仕掛けの意味するところが紐解かれていくのがまた味だったんだよね。これはどこまで狙ってるんだろうね?

 誤解されてしまったかもしれないけれど、何だかんだ面白かったですよ、ほんと。

 ではでは・・・


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