~無形物無体物~
〇はじめに
原題:「INTELLECTUAL PROPERTY」...知的財産
〇想起する作品
「未来世紀ブラジル」(1985)
「トータル・リコール」(1990)(2012)
「ダークシティ」(1998)
「サベイランス 監視」(2001)
「サベイランス 監視」(2001)
「フリーズ・フレーム」(2004)
「今日も僕は殺される」(2007)
「アジャストメント」(2011)
「嗤う分身」(2013)
「シンクロニシティ」(2015)
「リジェネレーション」(2015)
「ザ・プロジェクト 瞬・間・移・動」(2016)
...冷戦期のスパイものだったり、SFディストピアものだったり。
〇こんな話
この作品もある意味で「RED」
〇無形財産
幼少より神童の名をほしいままにしてきた天才発明家ポールの華々しき人生は、奇しくも(いや図られて)自身の18歳の誕生日の前日に開かれたコカ・コーラ社主催の青年発明家コンテストの授賞式を境に一転。
父親はポールと病気の母親を残し失踪。師と仰いだどこぞやの教授も共同研究を持ち逃げ。ポールは病床に伏した母親の看病に追われ発明活動を休止せざるをえず、治療費の捻出に家を売却するも足らず発明に充てるはずだった賞金も潰えてしまった。
自身の数々の発明をお金に代えようと特許を申請するが(この場合保有していた特許を売る...かも?)、彼の意志を余所にかなり以前よりそれらの権利は父親により売り払われていたことが発覚。彼が父から受けていた経済的援助は全て...コンテストの賞金すらも...?
母の死後、一念発起し発明活動を再開するも、なぜか彼のアイデアは尽く先を越され特許を取られており八方塞がりお先真っ暗。彼は人生の再起と逆転を図るべく、誰にも知られない様にと密かに密かに温めてきた世界を変える“キューブ”なる発明(アイデア)に全てを懸けることに。
彼は何が何でも是が非でもキューブというアイデアを盗まれまいと、疑心暗鬼に苛まれながら、勘違いにすれ違いにと不運が重なりながら、七転び八起き九転十倒の発明道を茨に刺さりながら串刺しにされながら毅然と突き進んでいく...
咳き込み始めた妻から顔を背けタバコを吸い煙を吹きかける夫。患者への配慮か病室の外で窓越しにタバコを吸う医師。カフェ店内でタバコを吸い同僚を避ける様に煙を吐くウェイトレス。大家さんの吸いたての煙管(パイプ?)を預けられそれをそのまま吸うドアマン(?)。自分の顔をした他人の真っ白な部屋で葉巻に火をつけ吸い始める主人公。タバコの煙が1つ象徴的に描かれている。
共有する空間において共有する見えない空気及びその流れ(広がりや繋がり)を可視化することに機能するのだろうか。マッカーシズムの台頭を背景に据え、冷戦期のスパイものの様相も相まって、どこで誰が彼のアイデアを盗もうとしているのかわからない、どこにいようと忍び寄ってくる頭の中にすら思考にすら侵入してくるかもしれない被害妄想すら過る不穏な空気の演出はピカイチ。
また、注がれていたミルクに注ぎ足されるコーヒー...コップの中で混ざり合うミルクとコーヒーが同列に扱われており、容器からこぼれる(こぼれた)塩、割れたお皿ないしこぼれた料理も併せ、不可逆的な意味合いも付加されているように思う。
タバコは火をつけた瞬間からカタチが失われ始める(変化するとも)。消費という行為に伴う今現在あるカタチある状態の喪失及び変化。しかしその物質的な喪失と変化とは裏腹に、タバコという概念それ自体は不変不動のものである。
何かしらの機能を持ち今現在カタチを有している物質的なそれらの消費(喪失及び変化)は、その概念(アイデア)の消費と同義ではない。それは元を辿った先にある無形物無体物としてのアイデアが確立され保護されているからに他ならない。
無形物無体物であるアイデアというものへの足掛かりが丁寧に構築されており、いつなんどきも心休まらぬ誰にも信用の置けぬ時代背景と、そんな境遇に翻弄されひたすらに疑心暗鬼に陥っていく主人公ポールへの信用も相まった、無形財産である知的財産へのアプローチは非常に興味深いモノがある。
アイデアを盗もうとしている存在と、アイデアを買い取るという存在が、それぞれ彼の世紀の発明をどう評価するのか(しているのか)という皮肉もまた見事だった。
〇最後に
Lyndsy Fonseca に惚れた・・・
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