~正義を問う~
〇はじめに
ベン・キングズレーはどこかの屋上で大体座ったままで時折歩き回ったりもする。
「フォーリング・ダウン」(1993)
「4デイズ」(2010)
「4デイズ」(2010)
「トレイン・ミッション」(2018)
爆弾テロ事件が頻発し日々テロの恐怖に怯えるスリランカを舞台に、とあるテロリストの解放を要求してきた男と矢面に立たされてしまった警察の攻防が描かれていく。
バスや電車にショッピングモール、そして警察署。ベン・キングズレー演じるヴィンセント・ディアスなる男が、利用者が多く様々な人種が集う人通りの多い街並みを誰かとすれ違いながら辿り爆弾を仕掛けていくオープニングは、いつどこで見舞われるかわからないテロの恐怖を、犠牲となるかもしれない一般人の姿を克明に映し出す。
そして街を一望できる場所にいる男と一室に集合している警察とのやり取りにおいて憎むべきテロを、テロへの確かな怒りをを顕在化させていくのだが、その感情が膨れ上がったところで矛先を向ける対象を喪失させ、被害者としての一面しかなかった大衆の姿を変貌させ一遍させて魅せる演出が凄まじい。
行き場を失い燻ぶった怒りや悲しみはいったいどこにあり、ではそれはどこへと向かうのだろうかという嘆きによって正義とは何かを問いかける。全然アクションしないし、身体的な動きも乏しいのだが、ただただこの一点のみで十二分に素晴らしい作品だ。
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